第3章 傀儡-KAIRAI-【イケメン戦国】
「信長様…
少々お耳に入れたい事柄が……」
その日、天主にまで光秀が赴いて来た。
この男が俺に聞かせたい事など陸でもない内容に決まっている。
だが其れは遅かれ早かれ必ず俺の役に立つ情報だ。
そうであれば俺が《明智光秀》を手放せないのも無理は無いという物。
「何だ?
言ってみよ。」
僅かに居住まいを正し真っ直ぐに見遣れば、光秀は不敵な笑みを湛えて語り出した。
「奥方様についてですが……」
「が如何したか?」
「いえ。
奥方様自身が…というよりも
奥方様の御実家について。」
の実家等、俺への捧げ物の如くを寄越して今頃は左団扇で暮らしておるのではないのか?
不審気に眉を顰める俺には構わず、光秀の低い声は続く。
「何やら不穏な動きが有ります。
どうも此の安土の動向に敏感な反応を見せている様で。」
「それがどうした?
そんな物は放って置いた所で、織田軍が揺らぐ筈も無かろう?」
「今は……ですが。」
確かに態々光秀が伝えたいと出向いてくる程の情報だ。
俺が容易に思い付く様な些細な物では無いのだろう。
「良し。
貴様が思う儘を言え。」
「はい。
どうも焦臭いのは、安土の秘匿事項が漏れている様子。
間者が紛れ込んでいる訳で無いのは確認済みです。
であれば……
内から外へ漏らしている内通者を疑うのが必然かと。」
「………が内通者だと言うのか?」
「いえ。
まだ其所までの確証はありません……が。」