第9章 豊臣の若紫【イケメン戦国】
それからも俺はの嫁入り仕度に力を注いだ。
だが以前と違うのはを嫁に《出す》為では無く、俺が《貰う》為なんだ。
との祝言に付いては勿論信長様にも許可を戴く。
他の男との縁談を進めようとしていた俺が今更何を…と居心地の悪さに冷や汗も掻いたが、信長様は『其れ見た事か』と言わんばかりの表情で了承して下さった。
こうして迎えた祝言の日。
未だ天下統一の道行き途中でもあり、大掛かりでは無く普段の宴に毛の生えた程度の催しだったが俺とには充分過ぎる祭事だった。
俺自身は腹に一物抱えていたが、俺とがこう為る切っ掛けを作ってくれたのは間違い無く光秀。
そんな事情も有って光秀の席を信長様の次席に設えれば、どうやら光秀も其の理由に気が付いた様だ。
「ああ、有難い。
此の席からは美しいの姿が存分に堪能出来るな。
こうして白無垢を纏ったを見れば、
やはり秀吉に渡すには惜しい。
……今からでも明智に鞍替えする気は無いか?」
相変わらずの軽口を叩きながらも、其れが光秀なりの祝辞なんだろう。
は心底嬉しそうにくすくすと笑い、俺は「絶対に渡さん」と力強く言い切る。
俺達三人の事情を知らない政宗、家康、三成は、光秀との遣り取りに首を傾げつつも三者三様心からの祝辞を贈ってくれた。