第9章 豊臣の若紫【イケメン戦国】
そして主賓である信長様の御言葉は……
「遅過ぎる!」
開口一番、俺への叱責から始まる。
「の真摯な想いにも気付かずのらりくらりとしおって。
秀吉以外の全員が焦燥しておったのだぞ。
彼の国からの縁談を餌に背を押してやっても
貴様は真っ正直に受け取る始末。
結果、光秀の手まで煩わせおってからに。」
「其の節は……」
自身の祝言であるにも関わらず、恐縮頻りで身を縮込ませる俺に漸く信長様も満足気に鼻を鳴らした。
「秀吉……いや、。
此の先も永劫に安土を、引いては日ノ本を頼むぞ。
俺の道行きに秀吉は無くては成らぬ。
其の秀吉を支えるのがの仕事だ。
為らば、俺に取っても無くては成らぬ存在。
秀吉と共に、生涯力強く歩み続けて欲しい。」
「信長様……」
の呟きを耳にして其の横顔を見遣れば、大きな瞳からはぽろぽろと涙が零れ落ちている。
白粉が崩れない様に気を遣いながら涙を拭ってやり
「……必ず幸福にする。」
そう言って遣れば
「はい。
私も秀吉さんを幸福にします。」
は泣き笑いの顔で大きく頷いてくれた。
「、秀吉に泣かされる様な事があれば
何時でも俺に報告するが良い。
此の織田信長が秀吉を叱り飛ばして遣る。」
………巫山戯ている様で、実は本気なのだろうな。
信長様に叱り飛ばされては適わない。
絶対にを泣かせる訳にはいかないなと心に誓い顔を強張らせる俺を見て、信長様の笑い声が響き渡ったのを合図に全員で乾杯と相成った。