第9章 豊臣の若紫【イケメン戦国】
「……俺を選べ。
俺はお前を生涯愛で続けると約束しよう。
お前が俺の奥と為れば
何一つ制限する事無く、好きに生きて構わんぞ。
但し、此の先俺以外の男には一切触れさせぬがな。
どうだ?
己の感情も素直に表せない野暮天な輩より
俺の元へ輿入れした方が幸福だとは思わんか?」
「光秀さん………」
俺以外の男の名を呼ぶに、思いの外熱い感情が迸る。
………駄目だ。
更に光秀の右手がの頬へと伸ばされれば………
駄目だ駄目だ!
「は俺が貰う。」
気が付けば俺は素早い動作での身体を抱き寄せていた。
僅かに目を見開いて、身を寄せ合う俺とを見据えた光秀は其の後直ぐに笑い声を上げる。
「そうだろう。
こう為らなければ可笑しいのだ。
面倒臭い秀吉の所為で俺は娶り損ねて仕舞ったではないか。」
「光秀……お前……」
「さあさあ、求婚相手を攫われた哀れな男など一人にしてくれ。
さっさと俺の前から消えろ……二人で。」
此所迄来て、漸く俺は光秀の本音を悟った。
本当に俺は……駄目な男だ。
「世話になったな、光秀。
此の礼は近々必ず。」
「ああ……
愉しみにしているぞ。
せめて此の先は俺への小言を減らしてくれると有難いのだがな。」
くつくつと喉を鳴らして俺達を追い出す様に右手をひらひらさせる光秀を見届けてから、俺とは此の場を後にした。