第9章 豊臣の若紫【イケメン戦国】
「其れともお前は用意した輿入れ衣装や道具が
無駄に為るのを憂いているのか?
ああ…ならば心配無用だ。
決して無駄にはさせないぞ……
此の俺が。」
「…………どういう事だ?」
「何……俺がを娶ってやろうと言っているのだ。
に取っても顔も知らぬ男より
幼小の頃から関わり合いの有る俺の方が良かろう。
お前のお陰か……
は随分と俺好みの女に育ってくれたしな。
俺は秀吉の事を『兄様』と呼ぶのも吝かでは無いぞ。」
何と表現して良いのか分からない熱い感情が一気に沸き上がる。
《憤怒》と表すのが一番近いだろうか。
其の激情に煽られ、俺は無意識の内に叫んでいた。
「巫山戯るなっ!!
誰が光秀なんかにを渡すものか!!
お前に嫁がせる位なら俺がっっ………」
其所迄を言って、俺は急激に我に返る。
此の先を口にして仕舞えば、もう俺は戻れないだろう。
今更気付いた己の想いに自身驚きながらも、再び固まる俺に光秀は酷く満足そうな笑みを浮かべて言った。
「俺が……何だ?
秀吉がを娶る心算なのか?」
「いや……違う……」
「違う?
其れが本音か?
ふん……
では、俺か秀吉か……
選んで貰えば簡単な話だ。」
「選ぶ…って……」
光秀の視線が動揺する俺を通り越し背後の襖に向けられた後……柔らかい声を掛ける。
「入っておいで………。」