第9章 豊臣の若紫【イケメン戦国】
「光秀っっ!!」
俺を制止する女中達を振り切り部屋に乗り込めば、其所では光秀が飄々と茶を点てていやがった。
然も興奮頻りの俺へちらりと一瞥を寄越し
「おや……秀吉じゃないか。
早速礼を言いに来たのか?」
不敵に口角を上げる。
「何が礼だ!
どういう事がきっちり説明しろ!!」
膝を正した儘で居る光秀の襟首を掴み上げ怒鳴りつけても顔色一つ変えやしない。
其れ所かくつくつと喉を鳴らし、穏やかな声色で語り出した。
「説明も何も……
彼の国へが輿入れする話は無くなっただけ…だが?
信長様も特に問題視していなかっただろう?」
「だから、何故そう為った!?
抑も何故、お前がの幸福を邪魔しやがるんだ!?」
「の……幸福?」
突然真顔に戻った琥珀色の瞳に射貫かれて問われた俺は次の言葉を飲み込んで仕舞う。
そんな俺を其れ見た事かと言わん許りに光秀は鼻を鳴らした。
「の幸福とは何だ?
顔も知らぬ男の元へ嫁ぐ事か?
其処で大事に囲われて、人形の様に生涯を終える事か?」
ぐうの音も出ないとは正に此の事だ。
今光秀が語った内容は俺の望みで有って、の幸福だとは……言えない。
襟首を掴んで顔を寄せた儘固まる俺の腹を探る様に光秀もじっと見据える。
暫くのじっとりとした静寂の後、光秀は揶揄い混じりの声色で再び言葉を紡ぎ始めた。