第9章 豊臣の若紫【イケメン戦国】
俺の自室に入り、先ずは二人分の茶を淹れてから静かな調子で話し出す。
自分に縁談が持ち上がっていると聞いたはやはり驚いた様だった。
「無理強いする訳じゃないが、折角の信長様からの話なんだ。
前向きに考えてみちゃどうだ?」
そう言ってやってもは俯いたまま何も答えない。
そりゃ直ぐに返事を出来る話じゃないよな。
急かす訳にもいかず、無言で茶を啜る俺を上目遣いで見遣ったが漸く紡ぎ出した声は……
「私が其の縁談を受け容れたら……
信長様の御役に立てるの?」
…………は?
瞬間、意図が分からずの言葉を頭の中で反芻した俺は、気付いた其の意味に慌てて身を乗り出した。
「違うっ……違うぞ、!
信長様はお前を政の道具にする様な御方じゃない!
純粋に年頃になったの幸福を願って設えた縁談なんだ。
だからお前は何も心配しなくたって……」
「でも……私…
ずっと前から好きな人が居るの。」
………………は?
唐突に聞かされた言葉に俺は固まる。
には惚れた男が居るのか?
今の言い種だと其の男と恋仲である訳じゃない様だが……の片恋って事か?
そんな素振り、今まで見せた事ないだろう。
いや、俺が気付かなかっただけなのか?
………偉そうに兄貴面して面倒見てきた心算でいたが、可愛いの片恋にも気付いて遣れないなんて俺は兄貴失格だな。
「其のお前が惚れてるって男は誰だ?
ずっと前からって事は、俺の周りに居る輩なんだろ?」
頬を桜色に染めてまた俯いて仕舞ったを見て、俺は此の恋慕を何とか成就させて遣りたいと急激に熱くなった。