第7章 下拵え【薄桜鬼】
「……美しかったぞ。」
呼吸を荒げ、ぐったりと横たわるの汗ばんだ額へ口付けを一つ落とし俺は立ち上がる。
そして徐に自身の着ている物を脱ぎ捨てながら、何でも無い事の様にさらりと問い掛けた。
「……
月の物は半月程前であったな?」
娶って以来、其の身体を嬲り続けて来たのだ。
俺はの月の物の周期など当然の如く把握している。
俺達は夫婦なのだ。
そんな事は気に掛ける様なものでも無いと思っていたが、其れでもは恥じて頬を紅く染め小さく頷いた。
こういった様相すらが俺を煽るのだと気付いているのか、お前は?
「ふん……
では、今宵は良い頃合いであろう。」
「……頃合い…ですか?」
「ああ。
お前の腹の中に俺の子種を仕込むには…な。」
其の意味を悟ったか、の頬は更に紅くなる。
然し、微かな笑みを浮かべている辺り……
拒む心算は無い様で、俺は思いの外安堵していた。
全裸になった俺が其のまま覆い被さろうとすると、は僅かな抵抗を見せる。
「……どうした?」
「あの……私だけ着た儘なのは…
私の身体にも…触れて欲しい……です…」
囁かれたか細い声に、俺の鼓動がどくん…と爆ぜた。
全く、こんな可憐らしい事を言われては堪らない。
此れ迄だとて散々触れてきたの身体。
だが今のお前が望む《触れ方》を叶えてやらねばなるまいな。
俺が羽織らせた白打掛と其の下の夜着を丁寧に脱がせてやれば顕れる艶やかな裸体。
何故だろうな……
幾度となく目に為た筈であるのに、今宵はまるで筆下ろしの小僧が如く昂ぶる己に嘲笑が洩れた。
ああ、そう思えば今宵こそが俺と……
夫婦としての《初夜》なのかもしれぬ。