第7章 下拵え【薄桜鬼】
「……嬉しい。」
「お前は嬉しいと言ってくれるのか?
顔も知らぬまま嫁いで来た先で
其の夫と為った男に辱められ嬲られ続けたのに。
そんな男が今更、偉そうに愛を語った所で
其れを信じると言うのか?」
己で告げた言葉を否定する様に問い詰めてみても、は俺の背に腕を回し左右に首を振る。
そして……次はの方から其の秘めた想いを聞かされる事になった。
「私は……
子供の頃から将来は風間家に嫁ぐのだと言い聞かされて育ちました。
私の夫に為るのはどんな男性なのだろうかと
不安に胸を震わせ、期待に胸をときめかせ過ごして来たのです。
そして初めて千景様にお会いした時……
私は此の人の為なら、何だって出来ると悟りました。
……莫迦らしいと笑いますか?
でも私は《運命》だと思っています。
私は《風間千景の妻》と成る為に生を受けたのだと。
ですから千景様が私に為さる事は、全て必然なのだからと……」
気が付けば俺は、を力一杯抱き締めていた。
「ああ……俺も《運命》だと認めるとしよう。
俺もを娶る事が《運命》だったのだと
今なら何一つ疑い無く信じられる。」
此の先は言葉など必要無いだろう。
其れを証明する様に、俺との唇はぴったりと重なった。
今までの身体を貪り尽くして来た癖に、此の女が何よりも愛おしいと認識した後では口付けすらが此れ程に昂ぶるとはな。
僅かに舌を絡め合っただけであるのに、俺の一物は既に変化している。
だが然し、其れよりも先に成さねばなるまい。