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keep as a pet【R-18 SS集】

第6章 黒い甘露【イケメン戦国】


謙信の気配が感じられなくなってから、信玄は何も言わず丁寧に私の拘束を解く。

全身の力が抜けきっていた私は、其の儘どさりと畳の上に崩れ落ちた。


「未だ話す気にはならないか?
 俺も此れ以上を苦しめるのは本意じゃない。
 たった一言で良いんだ。
 俺の欲する名を呟いてくれれば
 を逃す事だって出来るかもしれない。」

一段と柔らかい声色で語り掛けながら、信玄の手は労る様に私の全身を擦る。

此れ程の苦痛を与えておいて、次はまるで大切な女を扱うみたいな其の差異に、私の腹の底からは説明の付かない感情が湧き出した。

其の感情は急激に熱を持ち、溶岩の如く一気に噴き上がる。


「私に……雇い主なんて…居ない。」

「………何だって?」

「残念ね!
 私を雇ってる人間なんて居ない!
 私は私一人の意志で春日山へ………
 あんたの居場所へ潜入したのっっ!!」
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