第2章 安土へ。
「あ、あの・・・
馬に乗ったのが初めてで……
ちいさい頃、ポ、ポニーなら経験あるんですけどね・・・」
消え入るような声で、
カタカタと震える膝を抱えた私。
それを聞いた二人は思わずお互いを見合う。
「え、、、っと、『初めて』とおっしゃいましたか?」
やっとのことで口を開いた三成役と、
何も言えずに首をかしげたままの秀吉役。
長身でイケメンな俳優さん2人が
「そんなやつみたことない」
という顔をする様は、今この場でなければ大笑いしたことだろう。
「ん・・・ あぁ・・・
さっき三成が言った通り、火事場で怖い思いをしたせいで記憶が曖昧になってるんだろうな。」
先程までは殺気立っていた秀吉役が、別人のように優しい声で同情してくれる。
(怖い思いをさせたのはあなたもですけどね)
火事の現場から信長役を助け出し、追われるは、馬に乗せられるは…
落とされないようにと全身に力が入っていたせいか、体はすでにボロボロで今の状況に頭もついていってない。
一体、何が起きているの・・・・・・?
不安の渦に飲まれ、思わず涙が出そうになる。
「莉乃様、参りましょうか。 失礼しますね」
そう言って三成役が腕を取って支えてくれながら、「軍議の広間」とやらに向けて歩き出した。
トボトボと歩く、足元を見つめる。
サンダルのストラップは外れ、ペディキュアはところどころが剥がれていた。
その時、地が揺れて後ろからたくさんの馬が駆けてくる音がする。
「あっ、政宗様と光秀様、部隊の方々もお戻りになったようです。」
嬉しそうに三成役がそう言うけれど、首を上げ振り返る力が残っていない。
「おいっ三成!! お前が連れてるその女は誰だ!?
なんだその奇怪な身なりは! 膝が丸出しじゃねーか!!」
「帰還早々、膝に目が行くとは・・・ お前の女好きは病気だな」
「うるせー光秀!」
(膝が丸出し、って当たり前じゃない。スカートなんだから。
ところどころ燃えて型なしだけどね、、)
下を向いたまま、心の中で突っ込む。
この後・・・
かの有名な戦国武将たちと対峙することになるとは露知らず、「軍議の広間」に向かうのだった。