第7章 三日月の夜に。明けた朝に。
「ぶはっっっ」
政宗が吹き出したのを皮切りに、次々と笑い声が起きる。
「やっぱ面白いな、お前!!!
普通、失敗した手の内なんて明かさねーぞ??」
笑いすぎて涙目になった政宗がそう言うと
「昨日の演説はなかなかだと思ったが…
隙だらけのお前が『隙を突いて』だと?
やはり頭の中身はささやかだったな、小娘。」
口元をおさえながら光秀さんも笑っている。
「油断させて、って、、、
信長様には一番効かない手法だな。流石、信長様。」
「莉乃様は愛らしいお方ですね。
すでに、送り出したくない気持ちになっております。」
「あのさ三成…
莉乃が来てからお前の頭の中もささやかになってきてるんだけど。
織田軍の参謀としてそれでいいわけ?」
「こらー家康、軍議中に喧嘩しない」
若干馬鹿にされてる感は否めないけど、広間は暖かい雰囲気に包まれていた。
「貴様の魂胆など、最初から分かっておったわ。」
信長様はさも不愉快だ、という顔をしながらも
口元が若干、笑っている。
怒ってないんだ、良かった、、、
でももう一つ、言っておかなければならない事がある。
「あの、、、
お城に住まわせていただく以上、お役に立てるようにがんばります。
炊事も洗濯も、皆さんの雑用も。
で、ですが… よ、夜伽は………」
「良い。」
その一言に、全てが詰まっていた。
武将全員がほっと胸をなでおろしたのは公然の秘密だった、
莉乃以外にとっての。
___ 先の世に帰るために、昔の世を生きる。
置かれた場所で咲くのが花の運命ならば
実を付け花弁を散らすのもその宿命。
莉乃の物語は、今 始まったばかり。