第6章 夜伽
(秀吉&政宗Side)
それからしばらくの後。
莉乃の部屋へと続く廊下に、2人の男の姿があった。
「なんだ政宗、何しに来た。」
「なんだとは何だ、秀吉。
俺は莉乃に粥でも食わせてやろうと思ってな。」
飲みすぎには粥が一番だ」
政宗の持つ盆には、ふくふくと湯気が立つ土鍋が乗せられていた。
「飲めないお前が知った口きくな。
だいたいお前、飲ませすぎだぞ。」
「そう思ったなら止めりゃいいだろ。
お前だって酔った莉乃を見たかったくせに、むっつりが。」
お互い、肩で押し合いながら廊下を進む。
「信長様は・・・どうだ?
莉乃運んだ後、天主にいたんだろ?」
「しばらく光秀と3人で飲んでいたが、もうお休みになると仰るからお開きになった。」
「そうか。」
「莉乃は…大した女だな。」
「あぁ。」
「お前、莉乃が後世から来たって話、まだ疑ってるか?」
「いや。
さっきの宴の席で確信した。あいつはこの時代の女じゃない。
だいたい、この時代の女なら…信長様がどのくらいのお力があるか知ってるはずだ。
城に住まい信長様に直接お仕えする、
ましてや夜伽を命じられるなんて光栄の極みだろ。
さっさと孕んで信長様の側室にでもなれりゃ一生安泰だ。
それを莉乃は…
あの怒り様に「私の主は私だ」なんぞぬかしやがった。
信長様が抜刀しないかと肝を冷やしたぞ。
…政宗、俺はな、
今まで信長様が正室も側室もお取りにならない理由が分からなかった。
幾人もの縁談話がきてたんだ、お家柄も器量も申し分のない姫を選びたい放題だった。
なのに全部断ってるんだ、「つまらん」と言ってな。
あまりにも断り続けるから…
信長様が見初める女はこの日ノ本にはいないんじゃないかと思ったくらいだ。
莉乃位の女でないと…
日ノ本のずっと先を見据えてる信長様のお相手は務まらないのかもな。」
「…お前はそれでいいのか?」
「いいもなにも…それが俺らの『世の理』だろ」
「俺はいつでもかっさらう気でいるけどな!」
「ちょ、政宗お前ー!! お前もこらえろ!」
「お前『も』ってなんだよ、『も』ってよ!」