第6章 夜伽
(三成Side)
莉乃様、
莉乃様、、、
私は今ほど、権力が欲しいと願ったことはありません。
そう言ったら貴方は笑うでしょうか?
下級の出から軍の参謀にまで取り立てていただいた秀吉様と信長様には、感謝の念しかありません。
三成のこの命、尽きるまでお仕えします。
そして、、、お二人のためならいつでも散らす覚悟でございます。
ですが、、、
燃え盛る本能寺から信長様を連れて出てこられたお姿を一目見た瞬間に、
お仕えしたい、そう強く感じたのです。
500年の時を超えたと仰るあなた様の瞳から嘘偽りは一切見えず、
あのような珍しいお姿をされていても、、煤と土で汚れていても、、、、
あなたの内なる美しさと強い意思は光り輝いて見えました。
貴方が護身術を披露されたときは・・・
五臓六腑が沸き立ち、震えを感じた程でした。
女性にこのような感情を抱いたのは初めてです。
貴方の笑みを初めて拝見した時、確信いたしました。
私はあなたの笑顔をお守りする役目だ、と。
私にも、あのまっすぐな目でお心を述べて欲しい。
貴方が時折見せる、寂しさや戸惑いを…この三成にもお分けください。
信長様に夜伽を命じられた時のあのお顔…
静かな怒りをたたえた貴方の横顔に、
すぐにでもかき抱いてお部屋から連れ出してしまいたい、
そんな気持ちになっていました。
同時に…
わたくしに権力があれば、莉乃様に夜伽を命じられる…
美しく着飾ったあなたの肌を暴いて、艶やかな紅が差された唇を重ねたい…
そんな黒い感情も抱いてしまいました。
いけませんね・・・
不思議です。
知略を尽くし、策を練るのが私の職務。
そんな私が、冷静さを欠いて…
何の武器も持たぬまま、貴方に囚われています。
夜伽をお断りになられた時、どれだけほっとしたでしょうか。
続けて信条を話された時、どれだけ貴方の強さを感じ、感銘を受けたか。
共に生きましょう、乱世の世を。
貴方が選ぶにふさわしい男にきっと、なりますから・・・
どうか帰ると言わないで・・・
お側にいて、お仕えさせて下さい・・・