第6章 夜伽
(信長Side)
______これで3度目、か。
一度目は昨日。
火事場から脱出した後、俺に意見を述べ立ち去ろうとした時。
二度目は今朝。
元にいた世に帰らねばと、俺の命に断りを入れた時。
何か決意を持って意見する前にああする癖があるのだな、莉乃は。
深く息を吸い、背を伸ばす。
貴様は…
その瞬間、己の瞳に闘志が灯るのを自覚しているのか・・・・?
そして、今、三度目の「儀式」の後、
城にとどまり俺の元で仕えると言った。
なぜだ?莉乃。
一体何を考えている?
しおらしく目を伏せても無駄だ。
酒に酔い潤いを帯びたその目ですら、
貴様の内に秘める炎を消すことはできない。
そしてその炎が、俺を燃やす。
策略、裏切り、権力、飢え、戦、、、
この乱世の世で、無力な女が生きていくには確かに強い男の後ろ盾が必要だ。
しかし500年を超えた貴様が 「お力にすがるしか」 だと?
そんな目をして、その言葉を信じろと??
よかろう、貴様が用意した舞台に乗ってやる。
・・・・・舞台を仕切るのは俺だがな。
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「承知した。
今後は織田軍、そして俺のために尽くすが良い」
「は、はい! よろしくお願いします!」
広間が暖かい空気に包まれる。
「そうだよ、あんた、行くとこないんだから。
ここに居るしかないでしょ。
考えなくても分かりそうなものだけどね」
家康は辛辣だが、顔は喜びを隠せていない。
「良かったじゃないか!!これでお前ともっと『仲良く』できるな」
政宗にはもっと自制心を持ってもらわねば。
三成も秀吉も安心したような表情を浮かべている。
光秀は相変わらずだが、グイっと酒を飲み干した。
皆、莉乃が留まることがそんなに嬉しいのか。
わからんでもないが、心がざわつく。
「早速だが、莉乃に命を下す。
今夜、俺の夜伽をせよ」
莉乃よ、どう出る?
知略を尽くすが良い。