第5章 夏の夜の蝶々
「小娘、良いことを教えてやろう。
信長様は先程まで酒を飲まれていた。だいぶ飲まれていたから…
宴の席ではあらかた酔われているかもな。
いくら信長様といえ…酔の回った状態では心が緩むかもしれん。
お前が酌をしてさらに酔わせ、ひと押しすれば京への許可が出るやもしれんぞ。」
(んなっ!!お前、さっきはそんなこと一言も!!
しかも信長様が酔うなんて、そんな事あるわけ……)
背後から精一杯目を吊り上げ、秀光を睨む。
「光秀さん、アドバイスありがとう!!
私、やってみる。
どうしても本能寺に行きたいから。」
目に決意を灯した莉乃が光秀を見つめながら大きくうなづく。
(くっそ、、、あいつにあんな目しやがって…
勿体ない。)
「あ、あどば・・・?まぁ良い。戦果を期待しているぞ」
そう言うと光秀はポンポンと莉乃の頭を撫でた。
「どうした秀吉?
お前が垂れ目を吊り上げても、痛くも痒くもないぞ」
「狐野郎め」
ギリギリと歯を食いしばったとき、宴の広間に到着した。
襖を開けた瞬間から始まる、
夜の華に魅せられた、蝶々の物語。
_________________________