第5章 夏の夜の蝶々
(※秀吉Side)
(くっそーー、、、政宗の野郎、本気で拳入れてきやがって。
アイツは笑顔でやってくるからタチ悪だな)
____政宗と小競り合いをしたあの時、
政宗が脇腹に殴りを入れてきたのだった。
イテテと痛む箇所を押さえながら、宴の準備が出来たことを知らせに莉乃を呼びに行く
あの時は結局、家康が
「大の大人がくだらない… 公平に行きましょう」とあみだくじを作ってくれ、俺が呼びに行く役目を勝ち取ったのだけれど。_____
「隙有り!!」
「いっでぇぇぇ
何すんだてめぇ!!!!!!」
背後から気配を消して近づいてきた光秀が、先ほどやられた脇腹を突いてきたのだ。
「将たるもの、弱点をさらすのは命取りだぞ。
もしも間者が城に紛れていたらどうするんだ」
「てめぇが一番怪しいんだよ、その間者とやらにな!」
光秀は感情の読めないニヤつきで俺を見てくる。
光秀とはいつもこんな感じだ。
信長様の右腕・左腕として仕えているが、未だに何を考えているか読めない。
どこで何をしているのかさえ分からない時も多々ある。
それでも、信長様に忠義を尽くしているのはお互いに確信している。
俺が一方的に信じているだけかもしれないけれど。
「で。こんなところで何やってんだ」
「麗しの姫を迎えに行くのだろう? 俺も行こうと思ってな」
「う、麗しの姫って…
お前、昨日は『物の怪』扱いしてたじゃねーか。
先に広間に行ってろ、迎えは俺一人で十分だ」
「つれないことを言うな、秀吉。仲間ではないか。」
「やめろ、お前から『仲間』なんて言葉が出ると虫酸が走る」
いつもの通り、軽口を叩き合いながら廊下を歩く。
「……信長様のご様子は?
お前、、、天主に行ったんだろ?」
「いつもと変わらなかったぞ。」
ちらりと光秀の横顔に目をやるが、表情からは本心を見て取れなかった。
そうこうしているうちに、莉乃の部屋についた。
声をかけると女中が出てきて、
「準備はできております、豊臣様、明智様」
となぜだか自信有り気な顔を返してくる。