第4章 叶わない願い
さっき、秀吉さんが話してくれたことを頭の中で反芻(はんすう)しながら、自室に戻る。
(「主の意見は絶対」かぁ…
なんか、納得いかないんだよね)
障子を開けると、朝、世話をしてくれた女中さんが部屋の掃除をしていた。
「莉乃様、おかえりなさいませ。
皆様の反応はいかがでしたか?」
(さぞや驚かれたでしょう、分かりますよ。)とでも言いたそうに、自分が仕上げた「作品」に向けてにこにこしている。
「そういえば、まだお名前を伺っていませんでしたね。」
私がそう言うと、
「あぁ、失礼いたしました。
『吉野』と申します。 昨晩より、莉乃様のお世話をするようにとのお達しが下りました。
なんなりとお申し付けくださいね。」
「吉野さん、ですね。よろしくお願いします」
そういってぺこりと頭を下げる。
「あぁぁっ、い、いけませんっ!!
お姫様が下僕のものに頭をお下げになってはっっ!!」
と慌てて数歩下がり、三つ指をついて頭を下げる。
畳におでこがつきそうなくらいに。
「げ、げぼく!?」
・・・・・・ショックだった。
この時代では、どこにでも「主と従」の関係が付いて回ることに。
さっきの秀吉さんの言葉が蘇ってくる。
と同時に、ふつふつと怒りも湧いてきた。
「吉野さん!
わっ、私のいた時代では、人に上も下もありませんっ!!
そりゃ、上司と部下とか、先輩と後輩、ってのはありましたけど・・・
でも!この世の『主が絶対システム』はおかしいです!
頭を上げてください!!」
「私のいた時代??」
吉野さんは私の気迫に押されたのか、内容がちんぷんかんぷんだったのか、きょとんとした顔をしながらも顔を上げてくれた。