第3章 500年の時を翔ける
「あの『すまあとふぉん』とやらの中に映っていた女たちも奇怪ななりをしていたな、莉乃のように。
膝どころか、腿まで見え隠れしている者もいたぞ!!
先の世ではあのような破廉恥な姿をさらすのか…悪くないな。」
にやりと笑う政宗に向かって、秀吉が大きなため息をつく。
「…お前はもう黙ってろ」
信長が光秀にちらりと視線を投げる。
軽く頷く光秀。
二人の視線の先にあるのは、莉乃の座っていたその場所だった。
______翌朝。
女中さんに起こされた私は、やっぱり夢ではなかったことにため息をつく。
「莉乃様、大丈夫ですか?」
「あっ、はい、大丈夫です。
ごめんなさい、朝からため息なんかついて・・・」
「莉乃様は火事場から信長様をお助けした上に、医術の心得も武道のたしなみもあるとか。
大変勇敢な姫様と伺っておりますよ。
さぁ、信長様に呼ばれる前にお支度をいたしましょう。
お着替えの前に、湯浴みをなさってはいかがでしょうか?
その、お顔の煤を・・・・・」
言いづらそうに女中さんが掲げてくれた鏡に映るのは
煤と取れたマスカラで目の周りがパンダのように黒々としている、
煤をこすって筋のようになり、ハロウィンの化粧かと思うような顔だった。
髪はボサボサであちこちに跳ね上がり、土埃で手足も真っ黒。
よくこの姿でイケメン俳優たちの前に出られたもんだと、苦笑いする。
(あ、そうだ・・・『俳優』じゃなくて本物なんだ・・・
役、じゃないんだよね・・・)
開け放たれた障子から見える庭園、部屋にある調度品。
てきぱきと支度を手伝ってくれる着物姿の女中さん。
目の前に映る全てが夢ではないと知らせてくれる。
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湯浴みを済ませて部屋に戻った私は、部屋に美しい小袖と打掛が用意されていることに気づいた。
「こ、これは・・・?」