第3章 500年の時を翔ける
(こうなったら、、、
間違ってるかもしれないけど、やるしかない)
「使い方をお見せしますから、、、渡してください」
落ち着いた声で光秀役に言う。
間を取り持ってくれた三成役に少し微笑むと、羽交い締めにしていた政宗役の腕が緩んだ。
ノック式のボールペンの頭をカチリと押し、手帳の空いたページにささっと猫の絵を描いてみる。
全員の顔が固まり、声も出ないらしい。
さらに信長役の持つスマホを戻してもらい、
「これはスマートフォンという・・・電話です。」
電波は入っていないし、電池も残りが少ない。
きっと「電話」という意味も伝わっていないだろう。
けれど写真や動画なら見れるはずだ。
そしてそれが大きな意味を成してくれるはず。
「何!?」 「おぉ!」 「なんとこれは・・・」
「信じられません!どの文献でも見たことがない!」
「初めて見たぜ、こんな絵!」
フリックして次々に写真を見せていく。
驚きの声が上がる中、次は動画だ。
____私がデザイナーになると決め、OLを辞めたあの夜。
その報告を仲良しの友人たちにした、夕食の場を撮影したものだった。
「莉乃~ 遂に始動だね!!
ぜぇったい、日本一、いや、世界一のデザイナーになるって!!
あたしら応援してるからねっっ」
「莉乃の門出を祝って~~
かんぱーーーいっ!!」
あの夜から1ヶ月も経っていない。
東京から新幹線で2時間の距離だったはずが、とてもとても遠くに来てしまった。
どんどん浮き彫りになっていく現実・・・
おいてきぼりの私の感情・・・
友人からのメッセージに目が熱くなる。
奥歯を噛みながら泣くのを耐える私の様子に、武将全員が気づいた。
静まり返る広間に響く、友人たちの笑い声。
優しさをたたえた紫色の瞳が、何も言わずこちらを見つめてくる。
「お、お前・・・・・・」
背後から回された緩んだはずの腕が、きゅっと抱きしめるようにして暖かさを増した。
私はただ下を向き、武将たちの眼差しを避ける。
誰も口にしないけれど、何が起きたのかを悟ったから。
お互いが感じていた、信じられないような違和感の正体を。
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