第3章 500年の時を翔ける
「わ、私は嘘なんてついていません!!
揃いも揃って一体、何なんですか!
余興はどっちよ! これじゃ誘拐です!
警察を呼びますよ!!」
私は震えながらも叫ぶように言い、足元に置いていたバッグからスマホを取り出す。
・・・・・・嘘!? 圏外!?
私の行動よりも武将役たちの方が素早かった。
それは瞬きする間のこと。
政宗役が私を後ろから抱きしめるように羽交い締めにする。
バッグをひったくるように奪う秀吉役、
信長役を庇うように立った光秀役にバッグが渡る。
困ったような表情を浮かべ、三成役が近づいてくる。
その後ろには冷たい顔をした家康役が控えている、刀に手をかけて。
「莉乃様、落ち着いてください。ね?
政宗様、莉乃様は護身術に秀でているようですよ」
三成役の、その「よ」の瞬間に私の肘が政宗役のみぞおちに入る。
「うっっ、、、それ早く言え、三成」
そう言いながらも政宗役の閉める腕は緩まない。
「ほう、これはこれは・・・」
光秀役が低い驚きの声をあげながら、次々とバッグの中身を暴いていく。
スマホ、充電器。
ティッシュに化粧ポーチ、財布。
ボールペン、手帳。
そして私の大事な大事なスケッチブック。
「貴様が今取り出したこれは何だ?短刀ではなかったか。」
信長役がスマホを不思議そうに眺めている。
その横では、
「よくできた絵・・・」
家康役がささやくように言いながら、手帳に挟まった写真を見つめる。
「光秀、これらは南蛮から来たものか?
献上された物の中では見た事がないが。」
「いえ、信長様。
これらは南蛮渡来の物ではありません。
目新しい品が入れば、必ずわたくしが立会いの元検分しておりますし、献上品として信長様にお納めしておりました。
この材質も今まで見たものとは全く違います。
このからくりは一体・・・」
ビニール素材の手帳カバーを指でなぞり、ボールペンをいぶかじげに見ながら光秀役が答える。
______何かがおかしい、おかしすぎる。
あの火事の現場からあった違和感。
まさか……
その正体の輪郭が浮き彫りになってくる。
寒いような、暑いような。
答えに近づきたくない感覚に、私はブルっと震えた。