第13章 ★星の下★
空を掴んだ手が掴まれて引っ張られる。リヴァイ兵士長の体で隠され出入り口が見えない。
心配になって顔を上げると、思ったよりも近くに兵士長の顔があって、ゆっくりと近づいてきた。そのまま触れるだけのキスをされる。少し薄い唇。距離を取ろうとしても、腰と手首を掴まれていて動けなかった。
「ん……」
少しずつ深くなっていくキスが気持ちよくて吐息が漏れた。
私は一体何人とキスをしないといけないんだろう、なんて考える。団長を抹殺するまで何人も受け入れないといけないのだろうか? そもそも、団長を殺すとなると、この人まで裏切る事になって。いや、兵士長だけじゃない。私は人類から希望を奪う事になる。それは、きっと、世界の敵になるって事だ。そんなのなりたくない。なんて我儘が通用すればいいのに。私にそんな度胸無いって言えたら楽なのに。私はどうしたいんだろう。
「考え事とは随分余裕だな?」
「ちょっと、考えないといけない事がありまして……」
「悔いの無い選択をしろ。俺に言えるのはそれだけだ」
「悔いの無い……」
きっとそれは、出来ない。どちらを選んでも私は後悔する。
「お前は優しいからな。何を選んでも悔いは残るだろうが、俺はお前の選択を信じてやる」
「兵士長」
「もしお前が敵になったら俺が殺してやる」
ああ、これは、この人なりの優しさだ。私が誰かを裏切る前に私を終わらせてくれれば、私は団長を殺さなくて済む。調査兵団を、世界を敵に回す前に私が終われる。もう、人を殺さなくてよくなる。
「私が味方のままだったら?」
「俺の背中を預ける。それで十分だろ」
「そうですね。それは、とても、幸福です」
溢れた涙が止まらない。精一杯の笑顔を作った。