第12章 ★脅迫★
「……それは、ありがとうございます」
ナイフを懐にしまい、何事も無かったように歩き出す。何故かミケ分隊長が私の後に付いてきた。そういえば今更気付くが、彼は団服ではなく私服だ。調整日なんだろうか?
相変わらず匂いを嗅がれているが、調査兵団の個性豊かな面々を一々相手にしていたらキリが無いと学習したので、好きに嗅がれる事にする。
「お前からはリヴァイと同じ匂いがする。それに混ざって様々な匂いがするな。エルヴィンとか」
「お気に障りましたか?」
「いや。あの二人がお前に熱を入れるのが気になってな。荷物持ちはいらんか?」
「……お願いします」
向こうにもメリットがある契約なようなので、大人しく荷物持ちを頼む。ただ、警戒を解くつもりは無い。
買い物リストを書いたメモを見せて店までエスコートしてくれる。意外と紳士だ。流石に下着ショップの場所は自分で探した。そして、私は手に何も持たずほぼすべての買い物を終えた。まさか本当に全て持っていてくれるとは。途中で持とうとしても決して首を縦に振らなかった。
「あとは、ナイフだけですね。行きつけの店があるので、そこに行きます」
「分かった」
それだけ言って本当に文句も何も無くついてきてくれるので、裏でもあるのかと様子を探る。が、今のところそういう反応は見られない。荷物が多いからだろうか?
路地裏にある行きつけの店にたどり着いた時は、夕暮れ時だった。まあ、この時間じゃないと開店してくれないので、最後に回していたのだ。ノックを五回する。そしてゆっくりと扉を開け慎重に店内へ入った。もしケニーが居た時の対策。ノック五回で連れがいる事を知らせ、時間をかけて入り隠れる時間を稼ぐ。まあ、匂いでバレるかもしれないが、気にしない。
「おやアリアちゃん。噂で聞いたよ? 調査兵になったんだって?」
「そうなのー。だからしばらく来れないから、ナイフの補充をしておこうと思って。いつものある?」
「投げ用なら二十だな。予備のナイフとして使えそうな物だとコイツだけだ」
「分かった。全部頂戴」