第12章 ★脅迫★
細かい所に目が行くのは戦闘をして既に理解していたが、それが私生活だと埃に向けられるのか。これは、塵でも残せばいろんな意味で無事では済まなさそう。気を付けよう。
足りない荷物は無いが、今後必要になりそうな物をピックアップしていく。アイロン、衣類、本、裁縫道具、筆記具、芳香剤。ついでにナイフもいくつか調達しよう。
「お待たせしてすいません。終わりました」
「これが鍵だ。合鍵はエルヴィンしか持っていないから失くすなよ」
「はい」
その時、焦っている足音がこちらへと近づいてくる。既視感。
「やぁ! アリア足りない物は無いかい?」
姿を見せたのは、ハンジさんだった。確か、ハンジさんとミケさんが分隊長だったか。
「今から買い物に行こうと思っていました」
「なら、私が付いて行ってあげよう!」
「オイ、クソ眼鏡風呂入ってねえだろ」
「え、臭う?」
私は無言で頷き、リヴァイ兵士長は鼻を摘まんでいた。割と濃厚な臭いが立ち込めてきた。付いてくるのは流石に嫌だったので丁重にお断りし、お風呂に入るよう伝える。が、本人は全く気にしていない。ハンジ班は大変そうだな……。同じ班じゃなくて良かった。
確かに衣類を買い込むので、荷物持ちが居てくれると非常に有り難いが、ちょっと両手が塞がるだけだしいいか。リヴァイ兵士長は流石に仕事がある。
二人に別れを告げ、一人買い物に向かった。既に私の噂が広まっているのか、すれ違う兵士全員から敬礼される。規律だから返礼するが、正直、私なんかにそんな事はしなくていい。どうせ嘘偽りだらけなのだ。私が逆にしないといけないのに。階級持ちって面倒くさい。中央第一の対人立体機動部隊は、ケニーが作った部隊だ。正式に発足したのは私が訓練兵団に入る直前。ケニーが頭だからあっちは敬礼とかしたことが無い。
兵士か……。曲がり角をダッシュで曲がり、振り向きざまにナイフを鞘ごと心臓目掛けて突き出す。鞘に守られた刃が相手の心臓がある部分に軽く刺さっていた。階段を下りる途中から感じていた視線。その犯人。
「……ミケ分隊長……何か御用でしたか?」
「たまたま見かけたので、少し鎌をかけただけだ。相変わらずいい動きをする」