第12章 ★脅迫★
手紙と一緒に渡された服。明らかに私が持っていない服。チラっと横目で団長を見る。ああ、めちゃくちゃ機嫌がいいように見える。きっとこれも、団長の好みなのだろう。きっと、多分。
白い長袖のブラウス。紺のカーディガン。紺のプリーツスカート。胸元に赤いリボン。白のハイソックス。黒のローファー。最早言葉も出てこなかった。つまりは、きっと、そうなのだろう。一体どこで調達してくるのかは分からないけれど、貴族様の行く学校の制服がこんな感じだったか。しかもちゃっかりカーディガンのサイズをわざと大きくして袖から手が完全に出ない。
「オイ。誰が着せ替え人形にしていいと言った?」
「似合っているだろう?」
「そういう問題じゃねえ」
「もう、早く行きましょ……」
団長に敬礼し、兵士長の背中を押す。この二人に付き合っていたら折角の調整日が消えてしまう。それは、何とか阻止したかった。似合わない服を着せられるより全然マシでもある。
部屋はすぐに着いた。まあ、階段を昇っただけだ。そして、今更自分が幹部だということを思い出す。個室。寝室と執務室はすぐ横にあった。寝室に中央第一と訓練兵団に置いておいた私物が届けられている事には驚きもしなかった。
荷解きをしていくと、部屋に誇りが一つも無い事に気付く。空き部屋にしては綺麗にされ過ぎている気がする。
「どうした?」
「いえ、綺麗すぎる気がして」
「当たり前だ。俺が掃除したばかりだからな」
へえ。兵士長が掃除してくれたのか。すごく隅々まで綺麗にしてある。
「はあっ!? 嘘でしょ!?」
「テメエ喧嘩売ってんのか」
思わず振り返ってしまったが、あの眼は本気だ。そして、今にも牙をむき出しで襲って来ようとしている。
「ごめんなさい! すいません! ありがとうございますぅううっ!」
「分かればいい」