第2章 ★解散式の夜★
この空気に耐えられなくなったのか、気持ちを堪えられなくなったのか。エレンは外へ飛び出していった。その熱意や瞳が奇麗だった。私には無い物。感じたことが無い感情。この感情は、何だろう? 羨ましい、のだろうか? アルミンやミカサという友人が居て、目的意識があって。私には、何もない。
気が付けば、ジョッキが空だったので、水をもらいに行こうと動いた。次の瞬間、左腕をレックスに掴まれる。あまりの力に、腕が悲鳴を上げた。
「いっ……痛い、です……」
「どこ、行くの? 食事は一緒にって言ったよね? 何で昨日食事来なかったの? 君は、エレンの方がいいの?」
腕を掴む力が更に強まった。
「お、水をっ」
一瞬、レックスの口元がニヤリと歪んだ。ヤバイヤバイヤバイ。全身が警告を発する。こんな場で、レックスを突き放せば騒ぎになる。そんなことは避けたい。なのに、離れないと大変な事になる気がする。どうする? どうすればいい。
「レックスさんも、おかわり持ってきましょうか?」
「うん、一緒に行こう」
腕を掴まれたまま、引っ張られるように食堂から出た。暗い夜道を、明かりが無い方へと引っ張られる。明かりが無いのはこちらとしても好都合ではあるが、流石に腕が折れそう。離して、という前に、空き家の壁に放り投げられた。
「っ!」
反射的に、背中で受け身を取ったが、衝撃は殺しきれず、腕も痛いままだ。握られた部分だけ、皮膚がめり込んでいる。これは、しらばく痛みが続くな。
ぼんやり考えていた時、顔の横にレックスの手が伸びてきた。まるで、籠に閉じ込めるように。
「あぁ……エレンの演説を聞いている君の顔を見たら、興奮しちゃった」
「何を、言ってっ!? な、何、これ」