第2章 ★解散式の夜★
解散式が始まった。私はとにかく、目立たないように抑えめに全てをこなした。バレているかもしれないが、目立つよりは教官の怒りを買う方がマシだ。なので、成績上位に入ることは無い。二一八名の卒業生の中に、私は含まれた。嫌なことに、レックスとやらも、入っている。
成績上位十名が呼ばれた。クリスタ・レンズ。サシャ・ブラウス。コニー・スプリンガー。マルコ・ポット。ジャン・キルシュタイン。エレン・イェーガー。アニ・レオンハート。ベルトルト・フーバー。ライナー・ブラウン。ミカサ・アッカーマン。
正直、クリスタが入ったのは意外だった。まぁ、ユミルが上手くやっていたから、当然なのかもしれない。仲間を見捨てない気持ちと、慈悲やら色々、他の人には無い才覚はある。何やら周りで、天使やら女神扱いをされているとか。何とか。確かに、可愛い、と思う。きっと、王家の騒動に巻き込まれてきた反動なんだろうな。
解散式が終わり、宴会が始まった。
「勝てるわけない!」
トーマス・ワグナーの声で、場が静まり返った。祝宴の最中に何事なんだろうか。早死にするタイプだな。
「お前だって知ってるよな? 今まで何万人食われたか……人口の二割以上を失って、答えは出たんだ。人類は……巨人には勝てない」
指揮官にも向かないな。兵士にも向かない。全てを諦めているなら、兵士なんかやめて、食料でも作っていればいいのに。まぁ、クリスタにも言える事か。医療系に進んだ方が良い。
「それで?」
エレンの静かな声が響いた。ちらり、と横にいるレックスを見るが、何やら真面目そうな顔でエレンを見つめていた。奴でもこんな顔するのか。これ以上付きまとわれたくは無いな。
持っていた水をゆっくり飲む。
「勝てないと思うから諦めるのか? 確かにここまで人類は敗北してきた。それは、巨人に対して無知だったからだ。巨人に対して、物量戦は意味が無い。負けはしたが、戦いで得た情報は、確実に次の希望に繋がる。俺たちは、何十万の犠牲で得た戦術の発達を放棄して、大人しく巨人の餌になるのか!? 冗談だろ!? 俺は、巨人を一匹残らず駆逐して、せまい壁の中から出る! それが俺の夢だ。人類は、まだ本当に敗北したわけじゃない!」