第9章 演習
見かねたリヴァイ兵士長が私の首根っこを掴んで無理やり引きはがした。あの、救出するなら、もっと優しくお願いしたいんですが……。
「行くぞ」
と言われた瞬間、二人分の足音がこちらに近づいてきているのが分かった。足取りがすごく楽しそうだけど、何だか嫌な予感がする。
嫌な予感というのは当たってしまうもので、扉が勢いよく開け放たれた。
「やっほー!! リヴァイ、エルヴィンとー……アリアだったかな?」
「あ、はい。104期訓練兵アリア・テレーゼです」
「私は、ハンジ・ゾエ。今あなたの匂いを嗅いでいるのがミケ・ザカリアスだよ。よろしくねー!!」
かなり力強く抱きしめられた。胸で性別が分かるかと思ったが、あるのか無いのかも分からなかった。
「フッ」
意味も分からずに鼻で笑われた。個性強すぎませんかね?
「気にしなくていいよー。彼は初対面の相手の匂いを嗅いで鼻で笑う趣味があるんだ」
私から一体どんな匂いがしたのだろうか? 気にしたら負けな気がするので、気にしない方向で行くとする。
しかし、これが精鋭の中の精鋭か。確かに歴戦を生き抜いてきただけあって、なんというか雰囲気が違う。それに、互いを信用し合っているのがよく分かる。私には無い物だ。これから作る? 誰と。何か私には眩しいな。
「彼女を連れて食事するわけにもいかないだろうから、一応三人分の食事を持ってきたよ。それと、必要な手続きを諸々終わらせてきた。流石に一人で食事を運べなかったらミケに手伝ってもらったよ。彼女と先に顔合わせする必要もあるだろうからね」
「そうか。助かる」
「それじゃあまたねアリア。演習楽しみにしているよ」