第8章 ★鳥籠の鳥★
本能が逆らえなかった。いつ死んでもいいと思っていたはずなのに。巨人を前にしても死を感じたりはしなかったのに。ただ拘束されて、ナイフも銃も無くなって、目の前の男に成すすべも無くたかが片手で息を止められただけ。それだけなのに、目の前にチラついた死が怖い。この男が、怖い。
「ああ……ゾクゾクするよ。リヴァイや巨人と戦闘しても恐怖しなかった君が、リヴァイよりも弱い私で恐怖している顔を見ただけでこんなになってしまった」
鎖の音を響かせながら、エルヴィン団長は私の手を自らの股間へと誘導した。
息が詰まる。
それは、膨張し、今にもズボンを破って出てくるんじゃないかと錯覚しそうな程張りつめていた。レックスなんかと比べ物にならない。体格のせい? いや、逆にレックスが小さかったの? 巨人の中のアレらよりも、ずっと狂暴だ。こんなの、無理。壊れる。死んじゃう。
思わず後退りしてしまったのが、愚かだった。
「え……?」
乾いた音の後に頬が痛みだす。痛くなってようやく分かる。罰を与えられたのだ。この男から逃げようとしたから。これは、罰だ。
目をそらしてはいけない。逃げてもいけない。痛い。痛いのは嫌だ。死にたくない。
「セックスの経験はほとんど無さそうだな」
「レックスに……襲われただけです……」
「じゃあ、薬なしでも気持ちよくなれるということを教えてあげよう」
「ありがとう、ございます……」
エルヴィン団長は優しく私を座らせると、懐から私のナイフを取り出して私のシャツを切り裂いた。そのまま股の部分の布を器用に切り取った。大事な部分が全てさらけ出された。
枷を外されることも無く、私自身のナイフでやられた事による羞恥に目を逸らしたくなるが、痛みの記憶がそれを拒んでくれた。
息が苦しい。もう、喉を掴まれていないのに、感触が残っていて感触に犯されている気分になってくる。
エルヴィン団長は私の様子を見て口元を歪めながら、ゆっくりとソレを取り出した。天井に向かって聳え立つ凶器。
「テレーゼ訓練兵舐めてみなさい」