第8章 ★鳥籠の鳥★
「で、いつまで上に乗っかってるんですか? 正直重いです」
「君が私の物になるまでだ」
「心苦しいですが、今は誰かの物になるつもりはありません。ていうか、早く睡眠を取られた方がいいのではないですか? 流石にお疲れなのでは?」
団長は一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの胡散臭い笑みを浮かべた。
「テレーゼ訓練兵」
「なん……」「私を癒してくれるか?」
返事を遮って言われた言葉が理解できない。
「……それは、マッサージでもしろ、という意味でしょうか?」
「フッ」
鼻で笑われたんですが!? 何も変な事言ってないはずですよね!? 悔しくなり目を逸らすが、顎を掴まれエルヴィン団長へと視線を強制的に戻される。痛い。
「目を逸らす事は許さない。私を見ろ」
顎を掴む手の力がどんどん強くなっていく。
「っ! い、いった!」
「俺を拒絶することは許さない」
顎を掴んでいた手がゆっくりと喉へと絡みつき、少しずつ圧迫されていく。片手だけなのに、気道が確実に塞がっていくのが分かる。殺すつもりは無いのだと頭のどこかで分かっているのに、息が出来ない恐怖に支配されていく。声も出せず、体が震える。意識が朦朧としてくると、喉から手が離れた。
「ゴボッゴホッ! う、ああ……っ」
「君の命は私が管理している。それを忘れないように」
「あっ……」
「兵士なら分かったら返事をしないとな? 君もこんな所で死にたくはないだろう?」
「は、い……エルヴィン、団長……」