第7章 質疑応答
繰り出される斬撃を躱しつつ会話する。強がってはみたものの、正直、回避で精いっぱいなだけだ。攻撃する隙が無い。確かに私も投げる用のナイフは持ってきている。でも、ここで手の内を晒すのは癪なのでしたくなかった。
出入り口まで戻ってきたところで、後ろ手に扉を開けようとしたが、開かない。外から押さえられている?
「悪いな。お前を外に出すわけにはいかねえ」
「それはご親切にありがとうございます。私としてはもう帰りたいのですが。正直上官に囲まれるのは得意ではないので、胃が痛いですし」
「クソでも我慢してたのかと思ったが、所詮は新兵だって事か」
思わず動揺してしまい回避が遅れた。仕方なく軌道を逸らすためにナイフで刺突を繰り出すが、たやすく回避されるし、軌道は逸れることも無く頬から血が流れる。回避できない事を見越されたか。流石すぎて言葉も出ない。
「対人格闘の成績は悪くなかったハズだな?」
「よくご存じですね」
「ケニーに教わったのか?」
「……物心ついた頃から地下街に居たそうです。その時に、教わりました」
少し試しに急所を刺しに行くが、腕ごと軌道をずらされ、的確にカウンターしてくる。それを同様に左手で払いつつ仕掛ける。が、男女の力の差が歴然で右手を抑え込まれないようにするので手一杯だ。
「中々いい動きするじゃねえかガキ」
「死にたくないのでっ!」
懐からナイフを取り出し投げつける。その回避動作中に股間を蹴り上げようとするが、動きを読まれていて足を掴まれた。そのまま押し倒されそうになるのをナイフで抵抗しつつ受け身を取らずにわざと倒れこみ首元にナイフを当てた。もちろん、私の首にもナイフの刃が当たっている。唾液を飲み込んだら喉に刺さりそう。
「お前らもう帰っていいぞ。悪かったな」
リヴァイ兵士長は、扉を抑えていたであろう人物に声を掛けた。途端に、扉から人の気配が去っていく。終わったらしい。どうしてこうなったのか。相手がナイフをしまうのを見届けてから私もナイフをしまう。乱れた呼吸を整えるが、相手は呼吸さえ乱れていない。なんか、ちょっと悔しいが、経験の差なのだろう。私はそこまで命をかけていない。