第5章 初陣:温もり
ジャンが興味を失ったように下がっていく。だが、その言葉を私たちは聞いていなかった。
倒れた巨人のうなじがぱっくりと割れ、そこから人間の姿が見える。ゆっくりと孵化するように、その人は体を上げていく。中から現れた人を見て、ミカサが近寄っていく。泣き出したミカサを見てみんな慌てて近寄った。
とりあえず、本部の屋上へと二人と連れていく。
「エレン……」
アルミンも近寄っていき、手を握って泣き出す。
「これをエレンが、やったってことか……」
ジャンが煙を出す巨人たちを見下ろす。
「オイ、見ろ……これじゃあ壁まで戻れねえぞ!」
エレンがいなくなったことで、私達を守ってくれる巨人は居ない。
「道を開くしかねぇ! アルミン、エレンとミカサを頼む! 行くぞ!」
ライナーが屋上から飛び出し、私もそれに続く。ざっと見積もって10体は居るかな。3メートル級が主なので、そこまで苦労はしなさそう。念のために刃を替えて飛び立つ。ジャンを捕まえた巨人のうなじを削ぐ。数を減らしても、どんどん押し寄せてきてキリが無い。救援要請も後を絶たない。少しは自分でどうにかしていただきたい。
飛んで斬ってを繰り返す。流石にガスが心配になってきた。が、何となく無駄のない飛び方も分かってきた。
気づけば返り血だらけだったのに、返り血すら蒸発して消えていく。
辺りを見渡せば巨人の数もだいぶ減っている。一度、乱れた呼吸を整える。
一度、エレンとミカサ、アルミンの元へ戻り、全員で壁を越えた。たくさんの犠牲があった。目の前で食べられた兵士、食べられなくも打撃等によってダメージを負って死んでいく者。たくさん居た。居すぎて頭が痛い。
一人、みんなから離れた所に隠れる。エレンの事は箝口令が敷かれた。
「よぉ、アリア」
「こんな所に出てきていいの? ケニー」
「良くはねえな。生きてるか見に来てやっただけだ」