第3章 初陣:対巨人
あ、だめだ。ご飯の事しか考えてない。盗むなんて、中々やる。サシャはたぶん、私と同じで飛び道具の方が得意なんだろうな。狩猟が得意そうなタイプ。ちなみに、食料の事になると、頭のネジが十本は抜け落ちる。そんなサシャが嫌いではない。いざというときのムードメーカーや偵察をこなす重要な戦力だ。味方をかばって死にそうではあるが、自分の身の危険はアッサリ回避しそう。ただ、銃には弱そうだな。なんか、経験が無い物には弱そうに感じる。
そんな中で、返してこい、だの怒声が響き渡る。
「後で皆さんで分けましょう。土地を奪還すれば、牛も羊も増えますから」
「あっ、私も食べていいの? 食べる食べる~」
私が言うと、みな口々に食べる、と言い出した。お肉という高級品は、やはり皆で食べたほうが楽しい。以前は無理やり笑顔を作っていたのに、この三年で自然と笑顔が浮かぶようになってきた。サシャやクリスタのおかげだ。だから、サシャの気持ちには答えたいと思った。
「そういや、アリアはどこの兵科にするんだ?」
「まだ決めかねてるよ」
「そうか……なぁ、調査兵団にしないか? その、お前、一〇位には入ってないけど、スゲー強えし、心強いっつーか……」
「っ!? 後ろ!」
嫌な気配がし、後退る。刃に手をかけた瞬間、エレンの後方壁の外側にそれは現れた。皮膚が無い五〇メートル超えの超大型巨人と呼ばれる巨人が、突如現れたのだ。空中から、いきなり。ありえない。いきなりだなんて。
誰もが声も出せず、ただそれを見ていた。当たり前だ。前ぶりも無く現れた。途端に、爆風が起こり、壁が破壊された。人も吹き飛ばされる。咄嗟にアンカーを出し、エレンを掴んで壁に張り付いた。
「なんだっ!?」
「いいからとっととアンカー出して! 重い!」
「っ! 悪いっ!」
見回すと、全員無事に壁に張り付いていた。しかし、壁に開いた穴から巨人が一体入り込んできた。しょうがない。久々の立体機動だ。試作品の対人用立体機動は使ったけど、正規品でどれだけ遊べるか、試してみよう。