第1章 ずっと大好き 大切な幼馴染み
屋上に着き辺りを見回すと、幸いにも誰も居なかった。
そう確認したのと同時に、我慢していた涙が一気にこぼれ落ちた。
視界はもう霞んでいて、我慢の限界だった。
「…っふ、うぅっ…」
ルフィがどんどん自分から離れていくような気がしていた。
そう思い始めたのは、何も最近の事ではない。
クラス替えの前から。
この高校に入学する前から。
中学生の時も、何度かこういう気持ちになった事があった。
他の人がルフィの話をしている時。
ルフィが他の人と居る時。
そして、ルフィが女の子に告白された時。
その女子と付き合ったりするような事はなく、安心したのを今でも鮮明に覚えている。
ルフィにはまだ女性と付き合うという意味が分からなかったようだ。
私が聞けばルフィは何でも答えてくれるけど、それは他の人にもしている事。
別に特別な事じゃない。
私が誇れるものがあるとするなら、それは”幼馴染み”という関係である事だけ。
ルフィには私が居なくても大丈夫なのかもしれない。
最近は特にそう思うようになってきた。
涙がどんどんどんどん溢れてくる。
止まらない。
(ルフィ、ルフィ…)
「オイ」
誰も居ないはずだと思い無我夢中で泣いていたら、誰かの声が聞こえたような気がした。
「…ルフィ?」
小さい声でそう言いながら後ろを振り向くと、帽子を被った人物がこちらを睨みつけていた。
でもその帽子は“麦わら帽子“ではなく、白い生地に黒い点の模様が入っているものだった。
「悪かったな、麦わら屋じゃなくて」
「…誰」
「あ?」
「ッ!?」
な、何この人…
めっっっちゃ恐いんだけど…!!
「何度も呼んだんだが聞こえなかったか?」
「だ、誰?」
やはりさっきから誰かが呼んでいる声がしていると思ったら、この人物の声だったようだ。
目付きが悪くて、目の下の隈がかなり濃い。
(人でも殺してそうな目…)
「てめェ今、人でも殺しそうな目とか思ったな?」
(え、な、なんで分かったの…!?)
「それぐらい見てりャ分かる」
(私、そんなに顔に出やすいのかな…?)
「自分で思ってるよりはな、っつーか、そろそろ口で喋れ」
(だからなんで私の心の中が分かるのよ…!?)