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Fate夢 短編集

第8章 【夏の思い出Ⅱ】FGO/ロマ二夢


ドンッ


『あ、すみませんっ・・ごめんなさっ・・・』


所々人にぶつかりながら、ドクターを探す。


『これは、大変そうだ・・』


キョロキョロと当たりを見渡しながら、少しずつ前へ前へ
こけないように歩いていく。すると、遠くから聞き慣れた彼の声が聞こえた。その声を辿りながら、人混みをかき分けかき分け進んでいくと、優しい橙色が視界に写った。


『あっ・・・ドクター!』


声をかけるが、やはり、聞こえていないらしい。より近付くために、もう少し人混みをかき分ける。近付くと少しずつ声がクリアになってきて、分かったことがある。ドクターはどうやら誰かと一緒なようだ。


「だから僕は・・・」
「・・・いじゃないですか!今日くらい・・・クター、わたし・・・っしょに・・」
「・・・だめ・・・!僕には・・・いるんですから・・」


何か言い争いでも、しているのだろうか。ドクターと誰か女性の声がする。私はやっと人混みを掻き分け終えて、ドクターの背にトンッと触れた。


『もう、ドクター!探しました・・・よ・・・』
「え、あっ!沙織ちゃん!?」
「あら?沙織ちゃん?」


振り返ったドクターはどこか困った顔をしていて、そのドクターの腕には先ほど聞こえた声の主であろう、女の人の腕が絡んでいた。
私は何を思いあがっていたのだろう。恋人同士だからって、当たり前に一緒にいれると思っていた。花火だって、約束を交わしたわけじゃないけど、ドクターも私と見てくれるはずだって、決めつけてた。そっか。約束、してなかったもんね。その光景に、何も言葉が出なかった。期待してたのは私だけだったんだ。舞い上がっていたのは、私だけ。
ばっかみたい。

私の眼から涙が一粒流れた。


『・・あ、の・・・ごめんなさいっ・・し、つれします!!』
「待って、沙織ちゃん!!!」
「あっ、ちょとドクター!」


必死で歩いてきた方向とは逆に、慣れない浴衣で人混みを掻き分けていく。裾をもつのがやっとで、ぐしゃぐしゃな顔を隠すこともできなかった。後ろから聞こえるドクターを声から逃げるように、ひたすら走った。
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