第5章 【騎士と王】FGO/ギル夢/主人公・女騎士/切
月明かりで照らされる沙織の肌は透き通っていて、今にも我のモノであるという印をその首筋に、肩に、腕に、胸元にその身体すべてに刻み付けてしまいたいほどだ。
片手の黄金の鎧をはずし、素手で滑るように沙織の手を握った。それは今まで抱いた女とはまったく違う、がさついていて、爪はところどころ欠けていて、いくつかまめができていた。けっして女の手ではない、騎士の手だった。
それでも、我にとってすれば、愛いものだった。
深い眠りについているのであろう、沙織はまったく起きる気配がない。
「・・・此度もご苦労であった。・・・我直々に貴様に褒美をくれてやる。」
そう言って、ゆっくりと眠る沙織の唇に己のそれを重ね合わせた。まるで二人だけの時を過ごしているような、甘く切ないほんの一瞬の時だった。
名残惜しそうに唇を放し、顔を見やれば、我は自分の眼を疑った。
泣いていたのだ、眠ったまま。つーっと流れ落ちる涙を指で掬い上げると、良く見れば、沙織は笑っていた。幸せそうな夢でもみているかのように。
もちろん、起きる気配はまったくなし。途端に、我の中に感じたことのない切なさが支配した。
貴様と我がいつかまた、遠いどこかで、叶うなら、今度こそ、貴様の全てを、我が支配したいものだ。
「・・・この、馬鹿者が・・っ・・・」
そう言い残して、我はその場を去った。
城に着くまで、一度も振り返ることはなかった。