第2章 【夜】FGO/ギル夢
次の瞬間腕の感触は消えていた。そして背中に感じる逞しい身体の感触とふわっと香る彼の匂い。まばたきひとつで、男は壁に背中を強く打ち、その下に伸びていた。
「雑種、誰のものに触れているか分かっているのだろうな」
ギルガメッシュ王だった。彼が私を助けてくれたのだ。
背後から感じる殺気はとてつもなかった。
カルデアの職員だから、手加減されたものの、ただの敵ならもう木っ端微塵だっただろう。強い長い恐怖からの安堵から、涙があふれるのは必然だった。
『王、様・・・っ・・・』
「雑種。用があるならば我をすぐに呼べ。我が来なければ、いや、有り得んな。何としてでもこの男を粉々に・・・っ」
夢のせいだろう。私はまるで幼い頃のように、ぐるりと身体を彼の方に向け、自ら彼の胸に飛び込んでいた。
『ありがとう・・ござい、ます・・っ』
「・・うむ。よかろう。今だけは貸しておいてやる」
私が泣き止むまで、王様はずっと、私を抱きながら、ゆっくりと頭を撫でてくれていた。その姿は普段の彼からは想像もできないようなものだった。