第2章 【夜】FGO/ギル夢
ひたひたと薄暗い廊下を歩いていると、廊下の奥の方からわいわいと騒ぐ声がする。どうやら、まだ起きている者がいるようだ。
汗によって冷えた身体がぶるりと震える。カーディガンをより一層強く握りしめた。深夜の廊下を歩くことがあったはずなのに、さっき見た夢のせいか、妙に恐怖心が私の心を揺すっていた。
『早く、いこ・・・』
と、より早く歩みを進めようとすると、前からカルデア職員であろう男に声をかけられた。
「あれ?沙織さん。こんな夜遅くにお一人でどうしたんですか?」
『・・・いや、少し喉が渇いたので・・』
名前も知らないような人だった。こんな知り合いは私にはいない。すると男は少しずつ私との距離をつめてきた。本能的に、足が後ろに後ずさる。
「それにどうしたんですか?その濡れた寝間着は・・・」
『・・寝汗が酷かったもので。』
「そうですか・・・」
そう言うと男の視線があからさまに私の胸元に向けられる。とても気分が悪かった。
『じゃ、おやすみ、なさい・・・』
そう言って男の脇をすり抜けようとすると、突然腕を捕まれた。
「夜の一人歩きは怖いでしょう?僕がお供しますよ。その恰好じゃあ、危ないですよ」
色々と、ねぇ?といいながら男は汚い笑みを浮かべる。悪寒が全身に走る。
『いえ、大丈夫で・・・』
「それになんだか身体も震えてるみたいですし・・・あ!僕の部屋、もうすぐ行ったところなんですよ。」
怖い。
人に恐怖したのはいつぶりだろうか。私の身体は寒さ以上に、恐怖に震えていた。
「なんなら、僕がその身体を温めて・・・」