第7章 愛する人【愈史郎】
「……京子」
小汚い幼子がポツリと言った。
「京子ちゃんって言うの?何処から来たのかな?お母さんは?」
禰豆子が屈んで目線をその子に合わせて訊ねると
「あっち……」
と、指を指すも真っ暗闇で、所々火が燃えている。
正直、普通の人間にはこんな焼け野原、北も南も解らないだろう。
ましてこんな子供……
「家族は一緒じゃないの?」
今度はアオイが聞いている。すると 京子と言ったその子供は、俺の服を引っ張ると
「おとしゃん……」
なんて言ってきたので
「はぁ!?」
思わず大きな声が出た。
女達三人の冷たい目が此方に向けられた。
「いや、待て。俺に子供がいるわけがないだろう?そんなこと お前達が一番良く解っているはずだ」
「まぁ、そうだよね……」
アオイの言葉に後の二人が頷いた。
「おい、離れろ。俺はお前の父親なんかじゃない」
小さな手を振り払おうとしたら……
「お、お、おとーーーしゃーーーーん!!!」
大きな声で泣き出した。
するとまた三人、いや、子供達にも睨まれた。
「とりあえず、もう夜も遅いし一緒に連れて行こう。いいでしょ?愈史郎さん」
気のいい兄貴にそっくりな事を言う禰豆子に
「お前達がちゃんと面倒を見ろよ」
そう言ってから、俺は用意した屋敷に誘導した。