第7章 愛する人【愈史郎】
「お前達が住む場所ぐらい確保してある。荷物はそれだけか?」
「ありがとうございます!でも、善逸さん……帰ってきた時にわかるかな……」
禰豆子が心配そうに言った。
「大丈夫よっ!あの3人なら、どうやっても探しだすわ!」
カラカラと笑うアオイに
「うん。炭治郎もいるから大丈夫」
禰豆子の肩をポンと叩く、カナヲ。
「うん、そうだよねっ。善逸さん一人だったら心配だけど……お兄ちゃんも伊之助さんもいるしね。
愈史郎さん、よろしくお願いします」
昔から変わらない笑顔で俺に笑いかける禰豆子。
だが、その禰豆子が俺の後ろを指さし、不思議そうな顔をして聞いてきた。
「あの……その子も一緒に行くんですか?」
「は?」
俺が後ろを振り返ると、そこには
小汚い幼子が、俺の服の後ろを摘まんでいた。
「まさか愈史郎さん……気付いてなかったの?」
「ずっといたよ、その子……」
禰豆子とアオイの言葉に、うんうんと頷くカナヲ。
「だから、その目止めなよ!汚い物を見るような目」
アオイの言葉は適切だ。
「実際、汚いじゃないか」
その時、カナヲの人差し指が俺の口に押し当てられた。
コイツの凛とした雰囲気は、少し珠世様に似ている。
まぁ、美しさは珠世様の足元にも及ばないがな。
いや、そんなことよりも……
俺は当てられた手を軽く振り払うと、一言口に出した。
「誰だ?お前」