第7章 愛する人【愈史郎】
夜道を皆が黙々と歩く。
子供達も、皆、我慢強い。
目の前で家が焼け落ちたり、人が死んで行くのを見ているからか……
こうやって一緒に歩いているだけでも、ほっとするんだろう……だが、
「おい」
「……」
カナヲが脂汗をかいている。
「お前……まさか……」
「ま、まだ大丈夫……」
その声を聞いて
「もしかして!」
「陣痛が始まったの!?」
アオイと禰豆子が声を上げると
「う、うん……」
カナヲが小さく返事をした。
「間隔は?」「何分!?」
「……ご、5分?くらい……かな……」
遠慮がちに答えたカナヲに、二人が息を飲んだ。
「おい、それって……」
「お願い!愈史郎さんっ!急いで家まで連れて行って!!!」
禰豆子が叫んだ。
「わかった。お前らは茶々丸についてこい。迷うなよ。カナヲを置いたら、直ぐ迎えにきて、お前らのどちらかを連れて行く」
俺はそう言うと、ぱっと茶々丸を出した。
何人かの子供達はそれを見て、びっくりしていたが、京子と言った子はじっと見ていた。
「お前もこいつらと一緒に来い。わかったな」
俺は京子の目を見て、頭にポンと手を置きながら言った。
すると京子は
「おとしゃん、いっしょ?」
「……後で合流する」
そう言うと
「うん。やくそくだね」
と言って小指を絡ませ少し不安そうに、でも笑いながら
「ゆびきりげんまん、だよ」
なんて言ってくるので
「……あぁ」
そう呟くと、カナヲを横抱きにして先に屋敷に戻った。