• テキストサイズ

せめて夢の中だけは ~【鬼滅の刃】短編集~

第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編


「父が、貴女だけはいつも近しい姉の様に接してくれていた、と申しておりました」

そ、それって私が無礼と言うか礼儀知らずと言うか……額にじわりと汗が滲む……

「父はそれに心が救われたと申しておりました。皆が当主として扱うなか、貴女だけは年相応の少年として接してくれていた、と……目を細めて話しておりました」


「そ、そうなんですね。私も耀哉君には凄く救われたの……」


バカにしてるわけじゃなかったのか……少しほっとしていると


「京子様は行冥も救っていますよ」


「え……」


ニコッと笑う輝利哉君。そして


「これは行冥が遺した物です」


そう言って二つの風呂敷包みを差し出した。

そのうちの一つは……

白い布で包まれていた……


「こちらは……申し訳なかったのですが、先に荼毘に付してしまったので……」


遺骨だった……



私はそれを膝の上に置くと、ギュッ抱き締めた。



あんなに大きかった彼が……




こんな小さな箱に収まるなんて……
信じられなかった……




「うっ……う……」


輝利哉君はこの戦いで、両親、そして二人の姉を失っている。

そんな辛い想いをした少年の前で泣くのは、とてもじゃないけど憚られた……


なのに……


「本当に申し訳なかった……」


頭を下げる輝利哉君……


本当は今の今まで、何処かで生きているんじゃないか、なんて甘い期待をしていた……

だからずっと涙が出なかったのだ。
なのにこの白い布に包まれた箱は……

その期待全てを、悉く粉々に壊していった……





/ 156ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp