第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
暫くたつと、今度は産屋敷邸に呼ばれた。
当主の挨拶をしてくれたのは、耀哉君の息子
輝利哉君だった…………
「父から京子様の事は伺っております」
「……ご病気だったのは存じていたのですが……」
「やっと最近になって、身の回りが落ち着いてきました……」
ニコリと笑うその表情は、疲れきっていた。
まだ親に甘えたい年だろうに……
当主の風格を外さない 輝利哉君……
見ている私の方が辛かった。なのに……
「永らくの間、藤の花の家紋の家に務めて頂き、誠に感謝しております。
それと、行冥の事ですが……」
ぎ、行冥?え?よ、呼び捨てなの?思わず私が固まってしまうと
「鬼殺隊の隊員は全て当主の子供の様に扱っておりまして……ご無礼をお許し下さい」
「いえ……そうなんですね。私、何も知らなくて……」
まぁ……大変だよね、産屋敷家も……輝利哉君の苦労も苦悩も私には計り知れない……
「私が行冥から直接聞いた話ではないので申し訳ないのですが……父には確りと京子様の事を報告されていまして」
私は黙って次の言葉を待った。
「婚姻関係に至れなかったのは、全て私共の不徳の致すところと存じます。
申し訳御座いませんでした……」
両手をついて深く頭を下げる輝利哉君に思わず
「えっ!?えっ!?いやいやいやいや……滅相もない!輝利哉君が謝る事じゃないよっ!大丈夫!!!私なんて一度嫁に行って帰ってきてるしねっ!ほらっ!もうっ!早く頭を上げて!」
びっくりして早口で捲し立てると
輝利哉君は、大きな目をもっと大きく丸くして
「やはり貴女は父が褒めていただけの女性ですね!」
大きな声で笑い出した。