第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
最終局面に入ると、鬼は夜の間しか動けないから一晩が勝負だったらしい。
先生は鬼が居なくなって、嬉しいのか……
よく解らない……凄く複雑な表情で帰ってきた。
そして……
「やはり彼に逢う事は出来なくてね……でも、鬼殺隊の人達から聞いた話によるとね……」
そう言って行冥君の話をしてくれた。
一番強い鬼の子分を倒した後、キブツジとか言う鬼の親分を最後の最後まで追い詰めた事……
そして、突然現れた痣の事も聞いてきたようで
「痣の出た人は、25歳まで生きる事が出来なかったらしいんだよ」
「え?行冥君は確か……27……」
「そうだ。だから彼は悟っていたんだろう……本当に素晴らしい人物だったよ。
ただ皆がね、怖くて近づけなかった、なんて話をしていてね……
俺は、そんなことはない、真っ直ぐで心の優しい青年だ!と言いたかったんだけどね……
それを知っているのは、私達だけで充分なんじゃないかな、なんて思ってしまってね……」
「ふふ、本当に……」
私が少し笑って答えると……
先生が……
「り、立派な最期だった、と……み、皆が……ほ、褒めてくれてね……」
とうとう泣き出してしまった。
「……そうなんですね……」
私は更に大きくなったお腹に手を充てて言った……
「それが聞けただけで 私は満足です。彼の願いが……鬼の居ない世が……叶ったんだから……」
唇を噛み締めた。
彼の愛した女が、彼の最期を聞いたぐらいで泣き崩れてはいけないと思ったから……