第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
「きっと彼は戦いの最前線に居ると思うから、会える確率なんてほとんどないだろうし……話す事も出来ないかもしれないが……
その……京子さんの事を伝える事が出来そうにないんだが……」
そう言うと、私の……
大きくなったお腹に目をやった。
あの日、そう、あの最後の日に愛し合った後
私は妊娠したのだ。
今まで ずっと妊娠なんてしなかった……
ううん。妊娠出来ないと思い込んでいたんだ……
離縁された時からずっと……
だけどあの日、きっと……
私の中は行冥君で満たされたのだ……
「大丈夫ですよ、先生!そんなこと気にしないで行って来て下さい!」
私が笑顔でそう答えると
「叔父さん!もし行冥さんに会ったら、京子さんには僕が付いてるから安心して、って伝えてよ!ね!」
先生は凄く複雑そうな顔をしながら、
「わかった。頼んだぞ、正一」
そう言って正一君の頭を撫でた。
そして翌日には、先生も旅立って行った……
その先生が帰ってきたのは、一月も経たない頃だった……