第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
それから数ヶ月がたった頃……
「え?先生が?」
「あぁ。直に最終局面に入るだろうとの事でね……医師が足りないらしい」
「そうなんですね……行かれるんですね」
「俺で役に立つのなら。だけど……」
ちらりと先生の横に立つ、甥っ子の正一君に目をやる。
「大丈夫ですよ。正一君なら、私が居ります」
「うん!京子さんが一緒に居てくれるなら、大丈夫だよ!叔父さん!行ってきて!」
私と正一君は力強くギュッと手を繋ぐと、目を合わせて微笑んだ。
「ありがとう、二人共!此れで妹夫婦の弔いが出来るよ!」
「でも怪我には気をつけて下さいね」
「弔いなんて偉そうな事を言っているが、後方支援のそのまた後方支援なんだよ……」
ぽりぽりと頭を掻く先生。
だけどその顔には既に闘志が漲っている。
「そんなことないよ、叔父さん!僕だって一緒に行きたいぐらいなんだ!」
……そうだよね。辛いよね……だけど
「そうだね、でも私達は此処で応援しようね。行冥君も居るからきっと大丈夫だよ」
「そうだよね!行冥さんは強いもんね!」
大きくなった正一君は、いつの間にか私の事を京子さんと呼んで、慕ってくれるようになっていた。
「その……その事なんだが……」
先生が私を見た。