第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
「そのような甘い考えを持って、挑めるような相手ではない」
「甘い考え……?そんなっ……違う……違います!
これは希望です!!!」
「……希望?」
「そうです!希望を胸に宿す人と宿さない人では、力が違います!それは、どんな力でも……
その……私には鬼狩りの事は全く解りませんが……
生きて行くための希望です!!!」
「生きる……」
「そうです!その為に、行冥君は戦っているんでしょう?貴方の為だけじゃない。世の中全ての人の為に!!!」
「私はいつも行冥君の思いを感じるだけで、幸せに生きてこられた。
いつかはずっと一緒に居られるんじゃないかと……
その希望を持っているのは そんなにいけないことですか?」
私の必死の問い掛けに
「……申し訳ない。貴女に生きる希望は全て託します。
ですが……
できれば私の事は忘れて、何方かと一緒に添い遂げて頂きたい。それが私の願いです」
どうしても首を縦に振らない行冥君。
だけど私も、ただここでじっと待つだけの大人しい女なんかじゃない。
「忘れる?そんなの無理に決まっています。貴方の心に私が棲んでいるように
私の心にも貴方が……行冥君が大きく根を張って棲んでいるんです」
「……京子さん……」
「それとも行冥君は、胸の中にいる私も追い出すの?」
「いえ……貴方の日の光の様な温かさは常に私の力になっております」
そう行冥君が答えてくれたのなら、私の返事は一つしかない。