第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
「……胡蝶さん?」
「………………」
私の質問に行冥君が沈黙する。
あぁ……そうか、やっぱりなぁ……こんな年上の大して器量も良くない私なんかより……
「は?」
行冥君が、頓狂な返事をした。
「え?」
私も思わず、頓狂な声が出る。
「何故、この話に胡蝶が出てくるのです?」
「えっと……だって素敵な方だったし、お似合いだったから……胡蝶様と一緒になられるのかなぁーと……」
「ま、まさか!!!そのような誤解を生むとは!!!私の心に棲まうのは京子さんだけです!!!」
「え……」
私は思わぬところで行冥君の本音が聞けて、思わず顔が赤らむ。
だけど、それだったら……何故……
「どうも私は言葉が足りない」
「普段はそれでも平気なんだけど……流石に今は……」
「はい……」
少し照れて頭を掻く行冥君。
そして行冥君は一つ大きな息を吐いた。
それだけで周りの空気がより一層重くなった。
「近々、鬼との最終局面に入ります」
「え?最終……?」
「これを逃すと、きっとまた何百年 何千年鬼との戦いは続きます」
「それは鬼の親分?を追い詰めてるってこと?」
少しだけ事情を知ってはいるものの、私は全くもってよく理解していない。
それは業とだった。鬼狩りとは関係のないところで、行冥君には寛いで欲しかったから……
「そのような感じです」
「だったら……、」
それが終われば私達は一緒になれるんじゃ……