第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
「京子様、ご馳走様でした。岩柱様の好物の炊き込み御飯、私も大変美味しく戴きました。それに楽しい時間も……有難う御座いました」
「私も凄く楽しかったです。行冥君の話も聞けたし。またいらして下さいね」
「はい。ありがとうございます。また来ます」
やはり愛らしい笑顔で笑うしのぶさん。そして
「では、京子さん。また……参ります」
「はい!いつでもお待ちしています」
私は抱き付きたい気持ちを抑え
「お二人に御武運を……」
そう言って、カチカチと火打石を鳴らすと……
二人は声を揃えて
「では行って参ります!」
「行って参りますね」
そう言うと、行冥君はドンッっと いつもの大きな音をたて、しのぶさんは ふっ と消えるように
私の目の前から居なくなった。
寂しくないなんて言ったら嘘になる。
だけど、きっと
私達は互いに傍にいなくても……
いつでも笑顔を……
匂いを……思い出せる
そんな存在になっていた。
だから何時でも、心は互いに寄り添っている。
そんな風に思っていた。
なのに……