第5章 藤の花の家紋の家 ~悲鳴嶼行冥~ 後編
「岩柱様も、その様なお顔をなさるのですね」
「……いや、その……
京子さん、こちらは胡蝶しのぶ。今、私の元で修業中です」
「えっ!?こんなに可愛らしい人が鬼狩り様なんですか!?」
小さくて華奢で可憐な容姿。腕なんて、私の半分くらいの太さじゃ……
「はじめまして、京子様。こう見えても、私、なかなか凄いんですよ」
ふふふと笑う笑顔からは、とてもじゃないけど信じられない。
だけど隊服を着て細い刀を持つ姿は、正直よく訪れるどんな鬼狩り様よりも、風格も備えている。
きっと彼女も、物凄く立派な方になるんだ。
「すまない、今日は夕飯だけ頂きにきた。直ぐに発つ」
「まぁ、そうなんですね。沢山用意してありますよ。さぁ早く胡蝶様もどうぞ」
私の言葉に、ニコッと微笑む胡蝶様。
女の私でも思わず、ドキッとしてしまう程の美貌だ。
「しのぶとお呼び下さい、京子様。岩柱様のお話も伺いたいです」
「何も話す事などない!!!」
焦って大きな声を出す行冥君に、私達は大きな声で笑った。
結局、その日の夕食は私としのぶさんの二人で楽しく盛り上がってしまった。
だけどすぐに別れの時がやってきて……